建築・福祉・整理収納の視点から考える、これからの住まい
これからを見据えた建築
高齢の方のリフォームをプランニングするとき、私が大切にしているのは、古くなった設備を新しくしたり、段差をなくしたりすることだけではありません。
「今、どんなことに困っているのか」
「これから、どのような暮らしを続けたいのか」
その両方を丁寧に考えることが大切だと思っています。
私は建築会社として福祉建築に携わる一方で、「整理収納アドバイザー1級」の資格を持っています。
建築、福祉、整理収納。
この3つの視点から暮らしを見つめることで、ご本人もまだ気づいていない不便や負担が見えてくることがあります。
ご要望とは別の場所に、本当の困りごとがある
私自身、お客様との打ち合わせの中で、最初にご相談いただいた内容とは別のところに、本当に解決すべき問題が隠れていることに気づいた経験があります。
毎日続けてきた動作は、ご本人にとって「当たり前」になっています。そのため、少し不便になっていても、「まだ大丈夫」「これくらいなら自分でできる」と思われていることが少なくありません。
しかし、普段の暮らしについて一つひとつお話を伺うと、階段の上り下りや洗濯物の持ち運び、トイレや浴室への移動、物の出し入れなど、知らないうちに身体への負担が大きくなっている場合があります。
特に、物を収納する場所と実際に使う場所が離れていると、家の中を何度も往復しなければなりません。高い場所や低い場所にある物を取る動作も、年齢を重ねるにつれて大きな負担や転倒の危険につながります。
こうした負担は、間取りだけを見ていても分からないことがあります。
どこで何を使っているのか。
どのような順番で家事をしているのか。
よく使う物が、無理なく手の届く場所にあるか。
整理収納の視点から暮らしを見ていくことで、住まいの中に隠れている不便を見つけることができます。
収納は、たくさんあればよいわけではありません
リフォームのご相談では、「収納を増やしたい」というご要望をよくいただきます。
もちろん、必要な収納量を確保することは大切です。しかし、高齢になってからの暮らしを考えると、収納は単に多ければよいというものではありません。
大切なのは、必要な物を、使う場所の近くに、無理なく取り出せる状態で収めることです。
収納がたくさんあっても、奥にしまい込んで取り出せなかったり、踏み台を使わなければ届かなかったりすれば、暮らしやすい収納とはいえません。
また、床に物が置かれていると、歩行の妨げや転倒の原因になります。将来、杖や歩行器、車椅子を使うことになった場合には、十分な移動スペースを確保する必要もあります。
整理収納は、家をきれいに見せるためだけのものではありません。
毎日の動作を少なくし、身体への負担を軽くすること。
転倒などの事故を防ぐこと。
ご家族が手伝いや介助をしやすくすること。
高齢になっても安心して暮らすために、整理収納は住まいづくりと深く関係しています。
今の暮らしと、これからの変化を一緒に考える
高齢の方の住まいづくりには、決まった正解がありません。
身体の状態も、生活習慣も、持っている物も、ご家族との関係も、一人ひとり異なります。
今は元気にできていることが、数年後には負担になるかもしれません。一方で、将来への備えを優先しすぎると、現在の暮らしが窮屈になってしまうこともあります。
安全性や介護への備えを考えながら、その方らしい生活や楽しみも大切にする。そして、限られたご予算の中で、どこを優先するのかを一緒に考えていく。
そこに、高齢の方のリフォームをプランニングする難しさがあります。
しかし、難しいからこそ、大きなやりがいも感じています。
間取りや収納場所を少し見直すことで、毎日の移動が楽になることがあります。
使われていなかった部屋を整理し、趣味を楽しむ場所や、将来は寝室として使える場所に変えることもできます。
家事の動線を短くすることで、今の負担を減らしながら、将来介護が必要になったときにも暮らしやすい住まいにすることができます。
「物を収める」だけでなく、「暮らしを整える」
整理収納というと、物を捨てたり、きれいに並べたりすることを想像されるかもしれません。
しかし、私がリフォームで目指しているのは、単に物を片づけることではありません。
その方が大切にしてきた物や、これまでの暮らしを尊重しながら、これからも無理なく生活できる環境を整えることです。
家に暮らしを合わせるのではなく、暮らす人に住まいを合わせていく。
そのためには、建物を直すだけでなく、生活動線や物の持ち方、収納の位置まで含めて考える必要があります。
建築会社としての知識。
福祉建築に携わる中で培ってきた視点。
そして、整理収納アドバイザー1級としての知識。
この3つを生かしながら、お客様の言葉だけでなく、その奥にある思いや日々の暮らしにも目を向けていきたいと思っています。
「まだ元気だから、そこまで考えなくても大丈夫」と思える今こそ、これからの住まいについてゆっくり考えられる大切な時期かもしれません。
高齢になっても、自分らしく、安心して暮らせる住まいへ。
これからも一人ひとりの暮らしに寄り添い、「相談してよかった」と思っていただけるリフォームをご提案していきます。


